おいしい鯨

鯨といえば、30代半ばの私より上の世代の人たちにとっては、鯨の大和煮やベーコン、竜田揚げなどいろいろ思い出深いメニューが浮かぶようだ。
私は給食で鯨が出た記憶は無いが、私にとって鯨料理といえば、もっぱら脂身の味噌汁だ。

昨日スーパーに行ったら、鯨の脂身を発見した。

鯨

正式には何という物か分からないが、皮付きの皮下脂肪を塩漬けにしたものだ。クリーム色の脂肪に黒い皮がついているものだ。
厚さ5ミリで大きさ3cm×5cm程度の大きさのものが3切れで、330円だった。
見た瞬間に買うことを決心したが、一応妻の了解を得て私は一番安いパックを買い物籠に入れた。
鯨の脂身は私にとって、非常に懐かしい食べ物なのだ。

私の実家がある新潟県の上越地方では、鯨の脂身を入れた味噌汁がよく食べられていた。
郷土料理として意識したことも無いので、料理の名前は知らないが、鯨の脂身のほかにカモウリやナスを入れるのがポピュラーらしい。
私の実家の場合は玉ねぎ、ジャガイモなどが入っていて、豚汁の豚を鯨の脂身に替えたものといえる。鯨の脂で夏バテを防ごうということなのか、夏に良く食べたと思う。
私はこれがかなり好きだった。3杯くらいはお代わりしていたと思う。

そんな懐かしい味を思い出しながら、帰ってきて早速料理を始めた。
料理といっても、ダシを取って、ジャガイモと玉ねぎを柔らかくなるまで煮て、その後細く切った脂身を入れて、後は味噌で味をつけるだけである。

鯨を入れると食欲をそそる独特の香りが立ち上り、汁の表面に浮いてくる油は、これで夏を乗り越えるぞという気持ちにしてくれる。
味噌は実家の味噌を使う。ちょっと濃い目に味をつけて、最後に畑から取ってきたネギを入れてみた。
最後に味を見たら、玉ねぎの甘みも出て濃い味が出ていた。
この味はキュウリと合うかも知れないと思い、急遽キュウリを入れてみた。味噌と玉ねぎと鯨の濃い味が、がしみこむと予想されたからだ。

最後に入れたキュウリはちょっと硬めだったが、悪くは無かった。
脂身は脂が出て小さくなっているが、黒い皮と一緒に食べると、こりこりしており、かみ締めると残っていた脂がジュワーと染み出てくる。
どこの鯨か分からないが、良くぞこれだけ脂肪をためてくれたという感じだ。
満足できる味だった。ああ懐かしい。
実は鯨の脂身を全部使うのはもったいなかったので、半分残した。また近いうちにもう一回楽しめそうだ。

鯨汁

さて、なぜ商業捕鯨が禁止されているのに鯨が食べられるのか気になったので、鯨のことをちょっと調べてみた。

どうも調査捕鯨で取られた鯨は、無駄にすることなく市場に出しても良いことになっているらしい。
鯨が食べられる余地が残されていることを知りちょっと安心した。
ただ、欧米諸国の捕鯨文化に対する理不尽な偏見は続いているようだ。
鯨は知能が高いからかわいそうとか、モリを打ち込むのは残酷すぎるとか、日本の研究者の鯨の研究論文の審査や掲載が拒否されたとか、相変わらずらしい。

しかし、そんな感情的なやり取りが続く一方で、鯨が世界の漁獲量以上の魚を消費していいるという報告もあり、鯨だけを保護しても生態系のバランスが崩れてしまうという指摘もある。
日本としては、魚も鯨も両方資源を守りながら食べていく方策を、大量消費国として責任ある立場で進めて欲しい。
私もそうしたい。

ちょうど今日(2004年7月19日)から22日までの4日間、イタリア・ソレントで第56回 IWC(国際捕鯨委員会)年次会議が行われる。
ネットでもライブで議論の内容が配信されている。

偶然鯨を食べただけなのだが、せっかくなので、議論の行方を見守ってみたい。

おわり。

(2004.7.19)