あぁ椎間板ヘルニア その1 〜椎間板ヘルニアとは〜

だれだれが重いものを持ったらギックリ腰になってしまったなどという話は、日常的によくきく話である。私は大学時代に引越し屋のアルバイトをしていて、重い冷蔵庫を5階あたりから運び出すときに腰に針を刺されたような痛みを感じ、2,3日は寝返りも打てない状況になったことがある。
しかしそのときに痛かったのは単純に腰だけであった。おそらく当時の腰痛は腰の筋肉の肉離れか、関節の捻挫が原因と考えられる。(医者にかかったわけではないので私見ですが。)
この単純なギックリ腰もかなりつらいものであるが、今回私が患った椎間板ヘルニアはその痛みをまったく超越したものだった。

単純なギックリ腰は、腰周辺の組織が炎症を起こして起こる痛みであるのに対して、椎間板ヘルニアは脊髄から分離した神経根が圧迫されて炎症を起こし痛みを発するものである。
太い神経が直接刺激されるわけだから、痛みのレベルは天井知らずとなるわけだ。
※書物によってはギックリ腰はすべてヘルニアを伴うという説明をしているものもある。

ヘルニアという言葉は、本来の場所に収まっているはずのものが外部に出てきてしまった状態を表す言葉である。椎間板とは背骨と背骨の隙間に薄く存在し、クッションの役目をする水分を多く含んだ軟骨組織だ。椎間板のおかげで、ある程度背骨が曲げることが出来たり、背骨にかかる力を吸収することができるのだ。
椎間板の中心には髄核というゼリー状のものが詰まっており、それが背骨に強い圧力が加わった拍子に椎間板の外にはみ出してしまう場合がある(この状態がヘルニア)。飛び出した組織は、そのすぐ近くを走っている神経根を圧迫し、痛みを発生させるいうメカニズムである。
通常ヘルニアを起こす椎間板は大体決まっていて、骨盤のすぐ上かその上の椎間板で多く発生するとのことだ。その部分にある神経根は足に繋がる神経が集まっている。したがって椎間板ヘルニア(以下ヘルニアという)になると多くの場合、強い坐骨神経痛が発生し、足の裏側全体が絶えがたい痛みを発生させることになる。

私の場合も、まさにこの世のものとは思えない激痛がに襲われた。私は痛いことで有名な尿道結石や、前歯歯根の化膿、膝の靭帯断裂などいろいろな痛みを経験しているが、痛みの強さ、継続する長さどれを取ってみても最高レベルの痛みだった。
ヘルニアの痛みのたちの悪さは、神経根が圧迫されているのは腰であっても、痛みの感覚自体は腰から足に起こるということだ。足から激痛が走っているときに、自分で足を押してみても痛みに変化はない。筋肉痛や痙攣なら確かにここが痛いと意識でき、自分の経験からある程度納得できるが、ヘルニアの痛さは実態が無いわけで、何をしても収まらないという不思議な状態となってしまう。また痛さで身悶えるという言葉があるが、ヘルニアの場合は完全に動けないため、身悶えることも出来ない。一般的に腰に負担のかからないように横になると痛さは収まるもののようだが、私の場合ピーク時にどんな格好をしようが激痛にみまわれた。まさに感覚的にはサメに足を食われたか、ピストルで撃たれたかというほど痛いのに、物理的な足は問題ないからそのまま放置されたという感覚だ。

ただし一般的に坐骨神経痛だけを発症しているヘルニアは、ほとんどの場合しばらく安静にしていれば症状が改善されるようだ。(ネットや書籍などいろいろなところに記述があるが、7割〜9割は直るとされている。)一昔前までは一度出たヘルニアは戻らないという認識だったようだが、最近はMRI等で継続的にヘルニアを観察できるようになった結果、人体はヘルニアに対応する仕組みが備わっており、外部に出てしまった髄核が再び吸収されて徐々に小さくなったり、神経がヘルニアを迂回した形で安定したり、次第に症状が改善されるというのが一般的な考えのようだ。
したがって腰痛で整形外科にかかっても大概は、レントゲンをとって骨自体に変形等が無ければ、安静にしていて様子を見てくださいということになるし、ヘルニアになったら即手術ということは無く、基本的に痛みを我慢しながら、安静にして直す病気であるとの考えが最近の主流のようだ。

しかしヘルニアが大きく、神経根を強く圧迫している場合は痛みだけではなく、足の麻痺が発生してくる。その場合、正座を続けた場合に起こるようにシビレや感覚の鈍さ(触られても分からない)などの知覚神経が麻痺したり、足首の動きや指に力が入らないなどの運動神経のマヒを引き起こす。

これがひどくなってくると、筋肉が落ち、歩行すら困難となってしまう。基本的にマヒがおきてくると、ヘルニアがいずれ小さくなっても神経に障害がのこりマヒが解消しない場合がおきうる。(神経細胞は再生しにくく、機能回復には時間がかかる。)
このレベルになるとヘルニアを外科的に取り除く、手術を検討する段階になる。

一般的に腰と足の痛みだけの場合は、何とか安静にして回復を待つ保存療法が、マヒが起きてきたら早めに手術をという判断基準となる。

私の場合は、まず痛みが非常に強く、手術直前は上向きで寝ているしかないという状況になってしまった。ヘルニアの体験記をネットで読んでも、トイレだけははってでも何とか行ったという人がほとんどで、私のように完全寝たきりの人は見たことがない。また足のマヒも始まっており左膝から下の感覚が鈍く、足は熱いのに触ると冷たい(血がいってない)というような状況になっていた。先生の診断によると、痛くなってから2ヶ月以上たっているにもかかわらず、だんだん症状が悪化していること、足首を上にそらす力や、指をそらす力がかなり弱ってきていること、小指や薬指の感覚が鈍っている(マヒが始まっている。)からそろそろ手術かなということになったのだった。

私の場合は、手術前の状況が10日以上完全寝たきりの状態、そして昼夜関係ない激痛、睡眠不足これだけでもギブアップしそうだった。だから決断も何も無くできるだけ早くお願いしますと言うしかなかったのだった。しかし一般的にヘルニアの手術の決断はそれ程簡単ではない。自分の話はしばらく置いといて、入院してしばらくしての病室で印象深い出来事があったのでその話をまず紹介したいと思う。

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(2003.12.21)