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修身の教科書を読んだ 以前もどこかに書いたかもしれないが、私が卒業した小学校は、何年か前に廃校になってしまった。廃校が決まったときは、さまざまな記念行事が行われた。その行事の一つに、各年代の卒業生が昔の教科書を持ち寄り、それを展示するという催しがあった。私の小学校は創立から100年以上の歴史がある。そのため展示されている教科書は、戦後だけではなく戦前の教科書も多かった。その中で特に興味深かったのは修身の教科書である。私もこのとき初めて修身という学科の存在を知ったのであるが、一緒にいた近所のおばあさんらが懐かしそうに見ていた。おそらく私と同世代以下の人たちは、私と同様修身という言葉は初めてと思う。辞書(Microsoft Bookshelf)に載っていた説明を引用すると、 私は見てはいけないものではないかという感覚もあったが、戦前の教育について興味があったため、明治25年に発行された尋常小学校向けの修身教科書一冊をコピーさせてもらった。そこに書かれている内容は、確かに国家への忠誠心を高めるための内容が多いが、親や兄弟、友達を大事にすることが重要であるという内容もある。まあ基本的に間違った内容ではないが、今の感覚で読むといささか極端ではないかという場面も多く、個人は国家のために生きるのだという傾向が強いと感じた。構成としては一般的にこうすべきという行動の指針を示した後、お手本になるような昔話が続くというパターンで構成される。その中で紹介されている話を紹介しよう。 「安芸の国に美志という女がいた。家はとても貧しく、母は病気になり、立つことができなくなった。美志は常に母の側について、看病し自分自身の衣食を削って、薬を求め心を尽くして養った。しかし母は、自分が病でいるために、美志が家にいなければならないことを心配し、それがかえって病気を悪くするのだった。母も美志に早く結婚することを勧めたため、美志はそれに従いある家に嫁ぐことになった。しかし1ヶ月もすると美志は母のことが心配になり、家に帰って再び夜昼なく看病を続け、看病はその後も28年に及んだ。母は美志の看病により、気持ちも衰えず64歳まで生きることができた。」 「昔あるところに、惣十郎と、市助という兄弟がいた。2人の祖父は不幸にして、目が見えず、耳も遠く、手足も不自由となってしまった。兄弟は早く父を失ったため、母子3人はこの祖父につかえて、孝行を怠ることはなかった。祖父はお茶と酒を好きだったので、その家は貧しかったが、自分たちの普段は粗末なものにしてでも、祖父にはそれらを勧めるのだった。冬の夜は兄弟かわるがわる、足元に臥してその足を暖め、夏の夜は蚊帳がなかったので、かわるがわる煙をたいて蚊を追い払った。その後市助は雇われて遠方に出て行ったが、その後祖父はぼけてしまった。母と惣十郎はますます心を尽くして、日夜眠らず介抱した。祖父は2年後、回復することなくついに死んでしまった。二人の悲しみはとても大きく、衣服を売ってお金を作り、盛大な葬式を行った。」 いずれの話も、親や年寄りへの孝行が重要であるということを示した話である。確かに子供や孫が、親や祖父母の面倒を見るのは当然であり、それは今の社会でも変わりないと思う。しかし残されたものの生活もある程度は保障される必要があるのではないかというのが、現代人としての私の感想である。 今日朝日新聞を見ていたら以下のような趣旨の記事が載っていた。 どうも日本では、伝統的に育児は家庭内で行うものであり、社会全体でコストを負担するという考えは乏しいということらしい。 なぜ日本で、社会保障(特に少子化対策に関して)が進みにくいのかということに関してその理由についてはあまり触れられていない。あまり家庭内のことを社会に面倒を見てもらうということを良しとしないこと、さらに年寄りが世の中でもっとも重要であるという修身の内容を、もう一度思い出してみると、その理由はなんとなく理解できる。日本において個人はむしろ、国や社会(女性の場合は家庭)に尽くすべきで存在であり、社会に尽くされる存在ではないというのが根底にあるように感じる。現代社会も明治の時代もその考えに本質的に大差はないのである。 私の父方の祖父母は現在も健在であり、老人を大事にするという考え方は大賛成である。しかし少子化問題も、日本のそう遠くはない未来にかかわる非常に重要な問題である。老後の生活の保障も大事だが、子育て世代を社会全体で支援する仕組みの整備が必要ではないかと考える。ここらあたりで日本の社会も変化が必要なのではないか。早くしてもらいたいものである。
( 2002.10.22)
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