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新宿で蕎麦 ここのところ駅での食べ物の話をしていたので、 もう一つ、私が見た光景をお話しよう。 それは私が学生の頃なので、10年くらい前の新宿駅だった。 私は電車を待ちながら立ち食い蕎麦屋に集まる人々を「いいなー。」と思いながら見ていた。朝だったこともあり、電車を待つわずかな時間の間にそばを食べようとするサラリーマンが数人いた。ちょうどある背広を来た50代と思われる男性が、かけ蕎麦を注文したところだった、彼は出された蕎麦をそのまま食べることはせずに、どんぶりを持ったまま後ずさりするようにカウンターを離れた。どちらかというと、他の客とある程度の距離を保とうとしたいう感じである。 店から3メートルくらい離れた場所を決めた男性は割り箸をどんぶりと一緒に左手に持つと、空いた右手はおもむろに背広のわきのポケットに入れられた。何を取り出すのか見ていると、ポケットから出てきた手には何か白っぽいものが握られていた。次の瞬間さら驚いたことにそれをそのまま蕎麦の上に載せたのであった。 天ぷら持参で、かけ蕎麦をたのむとは、何とお得だろうと感心すると同時に、背広のポケットの構造が気になるのであった。 ポケットから天ぷらを目撃した感動が覚めやらぬある時、大学生協の安い食堂でオバさんのお得な行為を目撃した。そこでの定食メニューは250円程度で安いのはありがたいのだが、味噌汁はまさに味噌汁で具のかけらが入っているとラッキーというものであった。そのオバさんは都会の人という感じではなく、どちらかというと田舎のオバさんという感じだった。うまく表現できないが、私の実家の近所を歩いていると違和感がないという感じである。 そのオバさんは、定食のトレーをテーブルに置くと、食べ始める前に体を左側に傾け、左手を床に置いたバッグの中に入れた。まさかまた天ぷらかという期待が膨らんだが、彼女の手にされたものはそれではなく、綿のようなものだった。彼女はそれを味噌汁の中に入れた。それはとろろ昆布だったのである。彼女のバックの中には口の開いたとろろ昆布の袋が入っていたのだろう。確かにお得かもしれない。 後日このオバさんは、大学の教授であることが判明した。大学の図書館で専門の学術雑誌を読む姿を目撃したからだ。近所のオバさんが、こんな所まで迷い込んだのかと思ったら、どうも友達に聞くとある学科の教授なのだそうだ。 結構こういうトッピング的なものをもちあるき、わびしくなりがちな食事をゴージャスにかえる行為をする人は結構多いのだろうか。非常に素晴らしいものに感じたのであった。 最後にもう一つ心に残る駅での話。 何かおかしいと感じた私は、慌てて、遠ざかる、扉と反対側のホームを見た。そこには別の人が深々と頭を下げる姿があった。その女性は、電車ごしに見える向こう側のホームの人に挨拶していたのだ。 「なんと紛らわしいことをする人だろう。」 終わり ( 2002.10.22)
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