ある虫と私

 

 

この話は、虫が苦手な方やお食事中の方は絶対にお読みにならない方が良いかと思います。 

 

人間のもっとも身近にいる昆虫であるハエ。しかしその生態は知ろうとしないだけなのかわからないが、その生態はなかなか伺い知ることはできなかった。
一般的に人間が好意をもっている虫(カブトムシ、セミ、カイコ、アゲハ蝶等)の一生については図鑑や、テレビ・新聞など様々なメディアで感動的な場面も含めて紹介されている。

しかし人間から見ると害虫であるハエの一生について説明するものは皆無である。
学校でも習ったことはない。(例外的にショウジョウバエを育てたことはあるが。)
まして日本の社会ではそのような虫の存在自体が問題だということで話題にはなっても、 それを観察しようということには決してならないような気がする。

しかし最近、「ディ○カバリーチャンネル」を見るようになって、ちゃんとハエの幼虫(蛆虫)の生態や、社会とのかかわりについて紹介されていたことに感動を覚えた。蛆虫の活用方法として以下のようなものが紹介されており、非常に興味深い、内容だった。

●壊死(大きな外傷等で、死んでしまった人間の組織)を蛆虫に食べさせる。
●殺人現場で遺体の周辺にいる昆虫を採集し、死亡推定時刻をより正確に推定する。
●着色してつりの餌に利用する。(これは有名。)
2つ目については、採集するプロと、分析するプロの方も紹介されていた。(日本ではない。)

私も蛆虫との関わりは比較的多い。 いろいろあるがそれををすべて説明していたら、人格的に誤解される恐れがあるので止めておくが、ひとつのエピソードを紹介しよう。

私は弟が中学生のころ、弟と夏休みの研究課題としてねずみの骨格標本を作ることを進めた。 今話題の恐竜展で展示されているような骨の標本を、ねずみで作ろうというのである。

私の提案に弟ものってきた。 私たちは、大きめのねずみを調達し、遺体を深めの発砲スチロールの箱に入れ、ほかの動物に取られないように、思い金属製のネットを被せ、放置することにした。

お分かりだと思うが、肉を蛆虫に食わせて、骨だけにしてもらう作戦である。 夏なので、次の日には虫が湧いているのが確認できた。 日に日に虫たちは丸々と太り動きまわる。

近くで祖母が農作業をしていていて、箱から漂ってくる猛烈な死臭が臭いから止めてくれという切実なクレームもあったが、われわれはかまわずプロジェクトを継続した。

さらに時間が進むと箱の周りにはサナギが増えてくる。ハエの巣立ちが始まったのである。 ネズミの体の組織も日に日に少なくなっていくが、相変わらずおびただしい数の虫が群がっている。思い出してもぞっとする光景である。

しかしある日の朝、いつものように様子を見に行くと、驚くべき光景が目に入った。
なんとあれほどいた虫が一匹もいなくなっているのである。 箱の中には、ネズミの骨だけが残っていた。

私たちはこれを見て感動した。確かにもくろみどおり骨が取得できた喜びもあるが、
餌がなくなるとさっと姿を消してしまったことに驚いたのである。
何も考えていないと思っていた蛆虫であったが、次の餌を探して旅に出たのだろう。
なんと賢い生き物であろうか。 みんなで同じ時間に同じ方向に向かったのか、ばらばらに向かったのか興味深いところであるが、とにかく、この餌場に見切りをつけ、瞬時に次の行動に移したのである。

元気に大人になれたかはさだかではないが、昆虫の世界のシタタカな生き方に感動した。 (もし人間だったら、まだ食べ物があるはずだと何人かは残るに違いない。)

ちなみに、骨格標本は悪臭など家族にまで多大な迷惑を与えたにもかかわらず、
結局組み立ては失敗した。やはり、パーツはそろっていてもちゃんとした知識がないと再構成は無理であった。プラモデルのようにはいかなかった。

弟は、ネズミの遺体を手厚く葬った後、別の課題に取り掛からなければならなかった。しかし虫たちのシタタカな行動を見て感動したことは一生忘れていないはずである。(今度聞いて見たい。)

話はそれてしまったが、とにかくこんなにエキサイティングな生き物ハエの情報が少ないのである。その後機会が有るごとに本やインターネットで調べたが、なかなか日本語の範囲では見つからなかった。

そんな時に、最近になって先ほど述べた番組を見れたことは非常にうれしかったのであった。

日本人が無意識のうちに蓋をしてしまっているであろう話題を、深く掘り下げて紹介してくれた「ディ○カバリーチャンネル」に感謝したい(まだまだ期待しているが。)
一方で日本のメディアも蓋をしてしまっているのなら、蓋を開けてもらえることを期待したい。

もし私に子供ができたら、夏休みの研究の候補に、蛆虫の研究も入れてもらいたいものである。

※ハエは足の先で、とまったものの味がわかるため、汚い所にとまる頻度が高い。
そのためハエの足は非常に不潔であることは確かである。扱いには気をつけましょう。
また、蛆虫は外で飼う犬などの傷口についたり、人間でも耳の中に入ったりする場合があるそうです。頻度は少ないのでしょうけど気をつけましょう。

−以上−

(2002.8.21)