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鯉と私 今年はまだ食べていないが、鯉の季節がやってきた。 鯉といえば、とりあえず長野県の佐久が有名だが、私の実家の方ではかなり重要な食べ物だった。単に夕飯の料理として出ることはもちろんの事、鯉が豊富な親戚からは、親子5人で鯉料理の夕食に招待されるほどである。夕食に家族で招待されるのは一年の中でもこの時くらいである。そう考えると鯉というのは、昔から実家の辺りでは非常に重要なタンパク源だったのだろう。 私の夏休みの日課は、ため池の鯉に餌をやることだった。毎朝池にでかけ蚕のまゆから取れたサナギを、まくのであった。大きな鯉が口をパクパク開けて、おいしそうにサナギを飲み込む姿が印象的だった。今改めて考えると、私にとって鯉は単なる食べ物ではなく、牛やニワトリなどと共に、非常に身近な生き物だったのである。 鯉の思い出を紹介しよう。
私が小さい頃、この時期、風呂に入ろうとすると風呂場の大きなタライの中に、大きな鯉が泳いでいる時があった。これは捕まえた鯉を食べる準備として、しばらく(2,3日)真水で泳がして泥を吐かせるためである。タライには蛇口から少しずつ水を垂らしているため、鯉は酸欠になることはなく泳いでいられる。 小さい頃の私は風呂に入って、鯉がいるとなぜか嬉しかった。狭い空間の中に別の生き物がいると、それがたとえ人間でなくても、仲間意識というか、親近感が沸くのだろうか。 ある時も大きな鯉がたらいに泳いでいた。湯船に浸かってふと鯉を見詰めると、鯉も冷たい水の中からこちらを見つめているようだ。私は思わず鯉をこの暖かい湯船の中に招きいれたい衝動にかられた。 次の瞬間幼い私は、大きな彼(雄ということにしておこう。)をたらいから取り出していた。鯉は目を抑えて持ち上げるとそれほど暴れない。私は彼を抱えたままそっと湯に浸かった。 しかし、次の瞬間、彼も気持ち良く湯につかるだろうという私の期待はみごとに裏切れた。彼は激しく浴そうの中を泳ぎまわったのである。私の周りで彼が暴れた。彼にはやはり刺激が強すぎたようだ。私は彼に謝りながら、たらいに戻したのだった。彼はまた何事も無かったかのように、冷たい水の中にほとんど動かずたたずんでいた。
実家の近所の家には私より一つ学年が下の女の子が住んでいた。彼女の家の庭には池があり、立派な鯉が数多く住んでいた。彼女の兄と私は遊び友達だったのでよくその家に遊びにいったものだった。 そしてよくアブなどの虫を集めて鯉に与えた。虫が水面に落ちた瞬間、複数の鯉が同時に口を開けて、餌を奪い合う。そのすさまじい食いっぷりに感動したものである。彼女もその光景を見ながら、その鯉の姿に感動したらしい。 なぜなら、鯉は何を食べるかということを夏休みのテーマに選んだほどだからである。その結果によると、鯉は私達の予想以上だ。以下は彼女の観察結果である。かなり強烈な結果だったので、夏休みの発表会での内容は今でも忘れない。
クレヨン…食べた。 消しゴム…食べた。
私が卒業した、小学校では秋になると文化祭が開催される。文化祭では、そばやうどんも出される。地域の中に食堂のような店は存在しないため、珍しさもあって、それなりに人が集まるのであった。食べ物だけでなく地域の人々が作成した生け花などの芸術作品も展示され、実に文化祭らしいものであった。 展示の中には地域の錦鯉マニアが育てた自慢の鯉も水槽に入れられ展示される。錦鯉といえば、新潟県では泳ぐ宝石と呼ばれて非常に飼育が盛んである。人々は、子供の水浴びのプールみたいな水槽を上から眺め、鯉を鑑賞するのである。錦鯉といってもかなりの大きさである。体長は1mくらいあり、マルマルと太っており、その胴回りはかなりのものである。小学生だった私は恐怖を覚えたほどである。 そんな時事件は起きた。同級生のTM君は、廊下を歩いていた。一方廊下の反対側からは、食堂で出すための熱いお汁粉をお盆に載せた給仕の女の子が歩いてくるのが見えた。二人の距離は徐々に狭まる。二人が鯉の水槽脇ですれ違おうとした瞬間である。 1m程もある鯉が、水槽から二人の背丈ほどの高さの空中に飛び上がり、二人の間に落下した。1mの鯉が床で跳ね回る。 驚いた給仕の女の子は尻餅をつくと同時に、お汁粉がのせられたお盆は彼女の手から空中に放たれた。私は廊下でピチピチと暴れる鯉に一瞬気を取られてしまった。再び私はお汁粉の行方を追った。 しかし既に悲劇は起きた後だった。そこにはお汁粉まみれになったTM君が立っていたのである。 今回は季節に合わせて、鯉の思い出の一部を書いてみました。皆さんは鯉に対してどのような思い出をお持ちでしょうか。面白い話があったら教えて下さい。 (2001.10.27) |
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